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わんわん [日記]

横断歩道の手前で信号待ちをしていた。

おでの隣に立っているのは、
赤ちゃんを乗せた、ベビーカーを押しているお母さん。


赤ちゃんが、向こうを歩いている犬をさして、

「わんわん。」

やや得意げに言う。

「そうだねー、わんわん、いたねー」

お母さんがほめてやる。

わんわんがいたのが嬉しいのか、
それとも、わんわんと言えるようになった自分が嬉しいのか、

「わんわん。わんわん。」

赤ちゃんは楽しそうに繰り返した。

「わんわんいて、よかったね」

お母さんは、わが子は犬がいたので喜んでいると判断したようだ。

微笑ましい。

お母さんと目があったので、にっこりと会釈する。
赤ちゃんの顔はよく見えないが、
ちいさい手がベビーカーから伸びて、わんわんのいる方向を指している。

と、思ったら、
赤ちゃんの手は、おでのほうを指している。


「わんわん。」


え?

おで?

おでは、にんげんだけど?


救いを求める気持ちで、お母さんを見ると、
すいませんねえ、という顔で笑って、

「それはわんわんじゃなくて、
 おねえちゃんのかばんよ。」

と赤ちゃんに教えたので、

「ああ、そうか」と思った。


おではまだ、おねえちゃんでイケるのかと。


(おしまい)
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