最近の年寄りは若い [おとな]
おかんが遊びに来た。
久しぶりに会った、おかんは、
また太った。
「お母様は、あ、あいかわらず、ふくぶくしいですな。」
おでが言うと、いや~な顔をしていたが、
『福福しい』は褒め言葉だと思う、たぶん。
待ち合わせた、東京駅をでて大丸百貨店に行き、
レストランフロアでお昼を食べた。
太っているひとが食べる姿は、非常に福福しい。
見ていると、こちらまで幸せになる。
「うまいか?」
微笑を浮かべて聞いた、おでに、
またしても、いや~~な顔をしていたが、
ふくふくとした顔を見ていたら、
赤ん坊に食べさせているような気分になってしまったのだから、仕方ない。
昼食はおかんの奢りなので、食べさせてもらったのはおでなんだけども。
4時半から歌舞伎の夜の部を見る予定だが、
まだ時間があるのでとりあえず銀座に移動した。
「千疋屋でフルーツパフェを食べよう。」
と言っておかんを喜ばせ、歩き始めたのだが千疋屋が見つからない。
おでの記憶は、「大きい道沿いにある」という非常にあいまいなもので、
中央通りだったような気がして歩いていたのが間違い。
あるわけがなかった。
千疋屋は晴海通り沿いだ。
「いい運動になる。」
と、さんざん歩かされてもニコニコしている、おかんを見て不安になる。
このひと、そろそろ死ぬんじゃねえか?
いつもなら、何もそこまで言わなくってもいいじゃない、と、
思わず涙がこぼれちゃうくらいキツイ文句を言うはずなのに、
おかしい。
「最近、健康状態はいかがですか?」
真面目に聞いてみる。
「大丈夫だっつーの。」
ものすごくいや~~な顔をしている。
おかんは健康状態を聞かれるのがキライなのだ。
不機嫌そうな意地悪面を見て、ああ、よかった、
まだ、死なねえな。
と安心する。
結局、千疋屋にはたどりつけず、適当に入った店でおかんにスイーツを食べさせる。
(またしても、おかんの奢りなので実際食べさせてもらったのは、おで。)
ぽっちゃりした指で、木苺をせわしなく口に運びながら、
気がついたら60歳になっていて、本当にびっくりだ、というようなことをおかんが言うので、
こないだ聞いた話を披露する。
今のひとは、昔のひとに比べて実年齢より15歳若いという。
例えば、60歳だったら、昔の45歳くらいの体年齢らしい。
「そうかもしんない」、とおかんが、
「こういう歌知ってる?」と歌い始めた。
村の渡しの 船頭さんは
今年六十の おじいさん
年はとっても お船をこぐときは
元気いっぱい 櫓がしなる
それ ぎっちら ぎっちら ぎっちらこ
聞いたことのある、古い歌だった。
「今年六十のおじいさん、ってんだからね。」
おかんは納得顔で、またスイーツを食べ始めたが、
久しぶりにおかんの歌を聞いて、まぶたがじわっと熱くなった。
ヤバイのは、おでか?
そろそろ死ぬかもしんねえ。
なんつって、それは冗談。
年取って、母もおでも確実にカドがとれてるなと思った。
実年齢マイナス15歳は身体年齢の話で、
精神はちゃんと年齢なりに熟成している。
おかんは61歳、おではもうすぐ38歳だ。
(おしまい)
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久しぶりに会った、おかんは、
また太った。
「お母様は、あ、あいかわらず、ふくぶくしいですな。」
おでが言うと、いや~な顔をしていたが、
『福福しい』は褒め言葉だと思う、たぶん。
待ち合わせた、東京駅をでて大丸百貨店に行き、
レストランフロアでお昼を食べた。
太っているひとが食べる姿は、非常に福福しい。
見ていると、こちらまで幸せになる。
「うまいか?」
微笑を浮かべて聞いた、おでに、
またしても、いや~~な顔をしていたが、
ふくふくとした顔を見ていたら、
赤ん坊に食べさせているような気分になってしまったのだから、仕方ない。
昼食はおかんの奢りなので、食べさせてもらったのはおでなんだけども。
4時半から歌舞伎の夜の部を見る予定だが、
まだ時間があるのでとりあえず銀座に移動した。
「千疋屋でフルーツパフェを食べよう。」
と言っておかんを喜ばせ、歩き始めたのだが千疋屋が見つからない。
おでの記憶は、「大きい道沿いにある」という非常にあいまいなもので、
中央通りだったような気がして歩いていたのが間違い。
あるわけがなかった。
千疋屋は晴海通り沿いだ。
「いい運動になる。」
と、さんざん歩かされてもニコニコしている、おかんを見て不安になる。
このひと、そろそろ死ぬんじゃねえか?
いつもなら、何もそこまで言わなくってもいいじゃない、と、
思わず涙がこぼれちゃうくらいキツイ文句を言うはずなのに、
おかしい。
「最近、健康状態はいかがですか?」
真面目に聞いてみる。
「大丈夫だっつーの。」
ものすごくいや~~な顔をしている。
おかんは健康状態を聞かれるのがキライなのだ。
不機嫌そうな意地悪面を見て、ああ、よかった、
まだ、死なねえな。
と安心する。
結局、千疋屋にはたどりつけず、適当に入った店でおかんにスイーツを食べさせる。
(またしても、おかんの奢りなので実際食べさせてもらったのは、おで。)
ぽっちゃりした指で、木苺をせわしなく口に運びながら、
気がついたら60歳になっていて、本当にびっくりだ、というようなことをおかんが言うので、
こないだ聞いた話を披露する。
今のひとは、昔のひとに比べて実年齢より15歳若いという。
例えば、60歳だったら、昔の45歳くらいの体年齢らしい。
「そうかもしんない」、とおかんが、
「こういう歌知ってる?」と歌い始めた。
村の渡しの 船頭さんは
今年六十の おじいさん
年はとっても お船をこぐときは
元気いっぱい 櫓がしなる
それ ぎっちら ぎっちら ぎっちらこ
聞いたことのある、古い歌だった。
「今年六十のおじいさん、ってんだからね。」
おかんは納得顔で、またスイーツを食べ始めたが、
久しぶりにおかんの歌を聞いて、まぶたがじわっと熱くなった。
ヤバイのは、おでか?
そろそろ死ぬかもしんねえ。
なんつって、それは冗談。
年取って、母もおでも確実にカドがとれてるなと思った。
実年齢マイナス15歳は身体年齢の話で、
精神はちゃんと年齢なりに熟成している。
おかんは61歳、おではもうすぐ38歳だ。
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2009-09-15 23:25
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コメント(7)
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私も息子が38歳になると61歳になる。
しかも、かなり近い将来だわ。
アタマの中身は依然として小学生のままなのに。
困ったもんだ。
by よっきー (2009-09-16 15:05)
私とmissoさん(あれ、昔の名前にしたのね)
ほぼ、同じ年なんだね。
その、歌、聞いたことある。
by masiko (2009-09-16 16:55)
よっきーさん>おお、よっきーさんも23歳で出産されたのですな!
子どもの時、親は大人で自分とは違うと思ってましたが、
今や23歳くらいの歳の差は、たいしたことないな。
だんだん、年齢関係なく友達になれるようになってきた。
18歳以上のひと限定だけど。(さすがに子どもはムリ)
ましこさん>おでは古い歌に詳しいよ~。(自慢)
そっか、ましこさんも詳しいのか~~。
missoに戻ったのは、戻したわけでなく、なんか自動的に戻った。
たぶん、ポイント合算したくてmissoのブログと統合したせいだと思う。
by misso (2009-09-16 20:15)
ワタシのあたまの中は、最近大正8年なんだよねー。
♪ラメチャンタラギッチョンチョンデパイノパイノパ~イ♪
東京節っつーんだけど、知ってる?
添田唖蝉坊。
岡大介って若い衆が歌ってて、ハマっちったぜ。
by mabo (2009-09-17 11:07)
maboさん>ふつうに知っている。
そんなに古い歌とは知らなかったな~。大正8年か~。
うちのばあさんも生まれてないや。
たぶん、おで、ふつうに歌えると思う。
by misso (2009-09-17 14:22)
私もとっくに角がとれて良い年齢なんだけど。
歳を取ると、逆にだんだん頑固になってるような気がする。
問題だ。
昔は、平均寿命が短かったからね。
今なら、60のおにいさん、っていう?(爆)
by 柴犬陸 (2009-09-24 00:08)
陸さん>だんだん頑固になってるのかも…。
自分で気づいてないだけで。
問題だ。(頑固よりむしろ気づいてないほうが問題か?)
今年60のおにいさん~♪
さすがに苦しいよ~(笑)。
by misso (2009-09-25 22:15)